Calvert式のGFRにCLcrを代入してよいか? ②

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<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

カルボプラチンの投与量をCalvert式で計算したら、オカシなことになった。おすぎに相談して、返事を聴いてる途中😅(いつも話が長い)
記事を分けたので、いままで出てきた公式などのおさらい☆彡

【Calvert式】
CBDCA投与量[mg]=設定AUC[mg・min/mL]×(GFR[mL/min]+25)

【Cockcroft-Gault式】
男性:CLcr[mL/min]=(140-年齢[歳])×体重[kg]/(72×sCr[mg/dL])
女性:CLcr[mL/min]=(140-年齢[歳])×体重[kg]/(72×sCr[mg/dL])×0.85

【CLcrとeGFRの互換性】
Jaffé法のsCrからC-G式で推算されたCLcrは、個別eGFRに近似する。

【安藤補正】
sCrに0.2を加算してCLcrを算出し、Calvert式のGFRに代入する補正法。

おすぎの回答(つづき)

婦人科領域ではsCr下限値が0.7mg/dLに設定されている

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おすぎ

『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016』には、ピーコの質問に関わる内容も言及されている。“腎機能の過大評価によるカルボプラチンの過量投与を回避するために[中略]婦人科領域では、極端に低い血清Cr値に下限値(0.7mg/dL)を設けることも行われている”と。

日本腎臓学会・日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・日本腎臓病薬物療法学会『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016』より改変
https://www.jsmo.or.jp/about/doc/guideline_160630.pdf
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おすぎ

クレアチニンは筋肉を構成するクレアチンの代謝産物。ほとんどが糸球体濾過で腎排泄されるから、そのクリアランスが腎機能の指標として利用できる。と言うことは、もともと筋肉量が少ない人はsCrも低いため、CLcrを過大評価してしまう欠陥がある。
CLcrの過大評価は腎排泄性薬物のオーバードーズにつながる。そこで臨床現場では、C-G式のsCrに下限値を設定する「ラウンドアップ法」が慣用されている。sCr0.6mg/dL未満の場合は、C-G式のsCrに一律0.6を代入する。
ラウンドアップ法は普通0.6だけれど、『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016』には0.7と記載されている。“婦人科領域”と限定されているので、『卵巣がん治療ガイドライン2015』を検索してみた。

日本婦人科腫瘍学会『卵巣がん治療ガイドライン2015』より改変
https://jsgo.or.jp/guideline/img/ransou2015-02.pdf
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おすぎ

確かに“現在、多くの臨床試験ではカルボプラチン投与量の上限や血清クレアチニン値の最低値(0.6mg/dLまたは0.7mg/dL)が設定されている”と、0.7のラウンドアップ法に言及されている。文脈上、米国の文献から引用されているようだったので、GOG(米国婦人科腫瘍研究グループ)の資料を調査してみた。

Gynecologic Oncology Group Newsletter “Protocol Department: Updated FAQ’s for dosing of Carboplatin” Spring 2011(リンク切れ)
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おすぎ

2011年春号の会誌に、カルボプラチンの投与量が特集されていた。その記事で“In patients with abnormally low serum creatinine (less than 0.7 mg/dl), the creatinine clearance should be estimated using a minimum value of 0.7 mg/dl”と注記されていた。しかも太字で!
やはり米国の婦人科領域では、0.7のラウンドアップ法が推奨されているようだ。

Calvert式に代入する腎機能は統一されていない

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おすぎ

そもそもGOGがガイダンスを発出したきっかけは、NCI(米国国立がん研究所)のCTEP(がん治療評価プログラム)が発出した通知だった。sCr測定法が酵素法からIDMS法へ変更される際、Calvert式の取扱いに関して指針が示された。

The Cancer Therapy Evaluation Program (CTEP), FOLLOW-UP for INFORMATION LETTER REGARDING AUC-BASED DOSING OF CARBOPLATIN. October 2010より
https://ctep.cancer.gov/content/docs/carboplatin_information_letter.pdf
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おすぎ

“In patients with abnormally low serum creatinine, estimate GFR using a minimum creatinine level of 0.6 mg/dL, or cap the estimated GFR at 125 mL/minute”と、CTEPが推奨するラウンドアップ法は0.6ではないか! どうしてGOGは0.7に変えたのだろう?

NCCN Chemotherapy Order Templates (NCCN Templates®) Appendix B: Carboplatin Dosingより
https://www.nccn.org/docs/default-source/clinical/order-templates/appendix_b.pdf
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おすぎ

がん化学療法の領域では、NCCN(全米総合がん情報ネットワーク)ガイドラインがよく参照される。Calvert式の取扱いについて調査してみると、0.7のラウンドアップ法を推奨していた。ただし、引用元が先述のGOGなので、NCCNの独自見解ではない。

Ando Y et al., Carboplatin Dosing for Adult Japanese Patients. Nagoya J Med Sci 2014;76:1-9より改変
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おすぎ

ところで、安藤補正を提唱している安藤先生はどう考えているのだろうか? ラウンドアップ法を含むGOGの対処に対しては、“Although these modifications were immediately effective for ensuring patient safety, they most likely did not enhance therapeutic efficacy”と述べている(Ando 2014)。つまり、安全性を優先した結果、有効性は低減したという評価。
Calvert式のGFRに何を、どうやって代入するのか統一されていない実態が見えてきた。そこで、安藤先生らのグループが興味深い論文を発表している。

今村知世ら『カルボプラチン投与量算出におけるCalvert式利用に関する実態調査』医療薬学2015;41:759-67より改変
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/41/11/41_759/_pdf/-char/ja
<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

国内の医療機関(呼吸器内科・呼吸器外科・婦人科)を対象した実態調査では、Calvert式のGFRにC-G式で推算したCLcrを代入する施設が大半だった。ただ、安藤補正を用いている施設は1/3に過ぎなかった。腎機能の過大評価に対する対策は、GFRに上限値を設定する施設(キャッピング法)が多数で、sCrに下限値を設定する施設(ラウンドアップ法)はごく少数だった。

肥満はC-G式によるCLcrを過大評価する

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おすぎ

結局、Calvert式のGFRにC-G式で推算したCLcrを代入する際、sCrを0.7にラウンドアップすべきかわからなかった。しかし、ピーコの疑問を解く鍵はそこではない。C-G式を過大評価してしまった原因は、低クレアチニン血症ではなくて過体重と推察される。
C-G式の定義をもう一度よく見てみると、CLcrは体重に正比例することがわかる。肥満ほど腎機能が良くなるのは不自然だから、C-G式の体重も何らかの補正が必要となる。この対策もいろいろ提案されているものの、一例として『日本語版サンフォード感染症治療ガイド(アップデート版)』を紹介しよう。

『日本語版サンフォード感染症治療ガイド(アップデート版)』「体重およびクレアチンクリアランス(CrCl)推定値の計算法」より
https://lsp-sanford.jp/sguide/body/M020900.php
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おすぎ

『日本語版サンフォード感染症治療ガイド(アップデート版)』は、BMI18.5未満では実測体重(TBW)、BMI18.5以上24.9未満では理想体重(IBW)、BMI25以上では補正体重(調整体重;ABW)をC-G式に代入するよう推奨している。インターネット上では、この補正法に準拠した自動計算プログラムが公開されている。
平田先生は『腎機能を正しく評価するための10の鉄則(改訂8版)』で「鉄則6:肥満患者の推算CCr算出のための体重には、補正体重または理想体重を用いる」と提唱している。なお、旧版では標準体重(SBW)も代用可としていた。

IBW(男性)[kg]=50+2.3×(身長[cm]-152.4)/2.54
IBW(女性)[kg]=45.5+2.3×(身長[cm]-152.4)/2.54
ABW[kg]=IBW[kg]+0.4×(TBW[kg]-IBW[kg])
SBW[kg]=身長[m]2×22

<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

ピーコの症例はBMI28.2なので、C-G式には補正体重を代入すべき。さらにsCrに安藤補正を適用して(その代わりラウンドアップ法は適用せず)、Calvert式を計算しなおしてみると――

IBW=45.5+2.3×(162-152.4)/2.54=54.2[kg]
ABW=54.2+0.4×(74-54.2)=62.1[kg]
CLcr=(140-53)×62.1/{72×(0.61+0.2)}×0.85=78.7[mL/min]
CBDCA投与量=5×(78.7+25)=519[mg]

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おすぎ

オォッ!? Calvert式に個別eGFRを代入した時(533mg)とかなり近くなった。ちなみに、sCrに0.7のラウンドアップ法を適用した時(その代わり安藤補正は適用せず)は581mgと算出される。
ただし、C-G式に補正法を重ね合わせているので、果たしてCLcrの推測精度は良いのだろうか? カルボプラチンは過剰だと血小板減少などの副作用を起こすし、過少でも腫瘍縮小などの有効性を減らす。C-G式の取扱いに悩むくらいなら、24時間畜尿でCLcrを実測し、安藤補正をかけてCalvert式を計算するのがよい。

まとめ

<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

カルボプラチンの投与量を算出するために、Calvert式が普及している。そのGFRは、Jaffé法のsCrからC-G式で推算したCLcrと読み替えられる。sCrをJaffé法に変換してCalvert式を計算する手法として、安藤補正が提唱されている。しかし、sCrの補正法にはラウンドアップ法もあり、ガイドラインや施設間で統一されていない。C-G式を典型的に扱えない症例では、24時間畜尿でCLcrを実測するのが望ましい。

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

やっぱり腎機能の評価って難しいよね😥
でも、CLcrが過大評価されてるって薬剤師が指摘しても、処方医に理解してもらえるかなぁ? 私にはC-G式の原理まで説明できないし、聞く耳をもってもらえない……ガイドラインで統一してくれればいいのにね!

コメント

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