Calvert式のGFRにCLcrを代入してよいか? ①

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ピーコの質問

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

婦人科で卵巣癌のTC療法(パクリタキセル+カルポプラチン)なんだけど、カルボプラチンの投与量どぉなのー?😟

【患者】
年齢:53歳、性別:女、身長:162cm、体重:74kg、sCr:0.61mg/dL

【処方】
カルボプラチン点滴静注液(AUC5) 670mg
ブドウ糖注射液5%250mL 1袋
  1日1回点滴静注(1時間)

Calvert式

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

カルボプラチンの投与量は、添付文書では体表面積当たり(mg/m2で設定されてます。しかし、抗腫瘍作用と血小板減少はAUCに相関することが報告されました。そこで、投与量をAUCで設定するレジメンが普及してます。

投与量[mg]=設定AUC[mg・min/mL]×全身クリアランス[mL/min]

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

カルボプラチンは、約75%が未変化体で腎排泄され、残り約25%が腎以外から排泄されます。尿細管では分泌・再吸収されないため、腎クリアランスはGFRに一致します。また、正常腎機能ならGFRは約100mL/minなので、腎外クリアランスは25mL/minになります。
したがって、上の式はこのように書き換えられます。

Calvert式

CBDCA投与量[mg]=設定AUC[mg・min/mL]×(GFR[mL/min]+25)

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

これがカルボプラチンの「Calvert式」ですね。レジメンによってAUCが定められてるので(今回のレジメンではAUC5)、患者さんごとにGFRを求めれば投与量が決まります。

GFRの推算

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

GFRはイヌリンクリアランスによって測定できますが、わざわざ測定してる施設は少ないと思います。私の施設では、C-G式(Cockcroft-Gault式)によるCLcrをCalvert式のGFRに代入してます。

Cockcroft-Gault式

男性:CLcr[mL/min]=(140-年齢[歳])×体重[kg]/(72×sCr[mg/dL])
女性:CLcr[mL/min]=(140-年齢[歳])×体重[kg]/(72×sCr[mg/dL])×0.85

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

さらに私の施設では、sCr0.7mg/dL以上の場合は実測値、0.7mg/dL未満の場合は0.7をC-G式に代入してます。この患者さんはsCr0.61mg/dLなので、0.7にラウンドアップしてCLcrを算出しました。

CLcr=(140-53)×74/(72×0.7)×0.85=109[mL/min]

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

そしてCalvert式のGFRにCLcr109mL/minを代入して、カルボプラチンの投与量を算出しました。

CBDCA投与量=5×(109+25)=670[mg]

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

でもなんか多すぎる気がするんですよねぇ……だって検査値にはeGFR78.8mL/min/1.73m2って出てるし。体表面積(Du Bois式)は1.79m2なので、個別eGFRは81.5mL/minとなります。これをCalvert式に当てはめてみると――

CBDCA投与量=5×(81.5+25)=533[mg]

<strong><span class="has-inline-color has-pink-color">ピーコ</span></strong>
ピーコ

ほらねっ(ドヤァ) GFRの推算法が違うだけで、カルボプラチンの投与量が140mg近く変わってくる! こんなのアリィ??🤣

おすぎの回答

<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

Calvert式のGFRに何を代入するかは、施設間で統一されていない。この患者さんに限って言えば、C-G式に実測体重を代入したため、CLcrが過大評価されている。肥満の場合は、理想体重か補正体重を代入することになっている。
カルボプラチンのような腎排泄性薬物の投与設計に、薬剤師が関わる機会は多い。だから薬剤師は、腎機能の評価に精通してる必要がある。

添付文書のCLcrはeGFRを代用できる

<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

近年発売される医薬品は、添付文書の腎機能が標準化eGFRで表記されるようになった。検査値にも標準化eGFRが表示されることが多いから、昔のように電卓を叩いて、C-G式でCLcrを算出する手間が省けた。
そうなると問題になるのが、CLcrとeGFRの使い分け。FDA(米国食品医薬品局)のCDER(医薬品評価研究センター)は、2010年改訂のガイダンスで“C-G式によるCLcrは、MDRD式による標準化eGFRと同等”と示した。しかし、2020年改訂のガイダンスでは“C-G式によるCLcrは、CKD-EPI式やMDRD式による個別eGFRと同等”と改めた。

<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

なぜCLcrはeGFRと読み替えられるのか? その原因は、sCr測定法の差異とされている。旧来のJaffé法は、現行の酵素法(日本)やIDMS法(米国)に比べて約0.2mg/dL高くなる系統誤差を生じる。だからC-G式にJaffé法のsCrを代入すると、CLcrは真の値よりおよそ2割低く推算されてしまう。ところがこのズレた値、偶然eGFRに近似することが知られている。

堀尾勝ら『日本腎臓学会疫学研究小委員会報告:腎機能に応じた投薬量の設定―eGFR 使用の注意点』日腎会誌2008;50:955-95より
https://jsn.or.jp/journal/document/50_8/0955-0958.pdf
<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

米国で添付文書にCLcrが表記されていた時代、sCr測定法はJaffé法だった。だからC-G式で算出されたのは、実質的にeGFRだった。その後、米国でsCr測定法がIDMS法に変更されると同時に、添付文書の表記もeGFRに改訂された。要するに、C-G式にJaffé法のsCrを代入すると、CLcrではなくてeGFRに近似するから、添付文書のCLcrはeGFRと読み替えられるわけ。

平田純生『腎機能を正しく評価するための10の鉄則(改訂8版)』より
http://cms.softsync.jp/rinshoyakuri/blog/docs/10-8-3_20191126.pdf
<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

このあたりの議論は、平田純生先生(熊本大学薬学部客員教授)『腎機能を正しく評価するための10の鉄則(改訂8版)』の「鉄則7:添付文書の腎機能表記がCCrであってもeGFRを用いてよい」に詳しいので参照してほしい。

Calvert式のGFRはJaffé法のCLcrを代入する

<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

ピーコが説明してくれたとおり、カルボプラチンの投与量は、腎機能にもとづくCalvert式で算出するレジメンが普及している。Jaffé法のsCrで推算したCLcrも、Calvert式のGFRと読み替えられる。ここで誤解してはいけないのが、酵素法のsCrでは代用できないこと! 酵素法のsCrで推算したCLcrは、Jaffé法より約2割高く推算されるから、カルボプラチンが過量投与されてしまう。

Ando Y et al., Adjustment of creatinine clearance improves accuracy of Calvert’s formula for carboplatin dosing. Br J Cancer 1997;76:1067-71より
<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

そこで安藤雄一先生(名古屋大学医学部附属病院化学療法部教授)は、酵素法のsCrをJaffé法に換算することで、Calvert式の補正法(Ando 1997)を提案した。具体的には、酵素法のsCrに0.2を加算してCLcrを算出し、Calvert式のGFRに代入する。俗に「安藤補正」と呼ばれていて、自動計算プログラムも提供されている。

日本腎臓学会・日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・日本腎臓病薬物療法学会『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016』より改変
https://www.jsmo.or.jp/about/doc/guideline_160630.pdf
<strong><span class="has-inline-color has-indigo-color">おすぎ</span></strong>
おすぎ

『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016』はCalvert式のGFRに、安藤補正か個別eGFRを代入するよう言及している。私の施設でも、呼吸器内科はC-G式で安藤補正をかけている(婦人科は安藤補正をかけず実測CLcr

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